〜dream in Okinawa〜 part2

 

 

『準備中』と書かれた店の前。
ドアを引けば、からん、と涼しげなベルの音が響く。

「いらっしゃいませ」

カウンターの向こうから、低い声がさらに涼しげな音でやってくる。
見れば驚くほど長身の青年が、グラスを拭きながら立っていた。

 

「ハジじゃん!!久しぶり!!」

ルルゥは飛びつくようにカウンターへ走って行き、大輪の花が咲くような明るい笑顔を見せる。
ハジもその笑顔につられて少し微笑み返した。

「お久しぶりです。ここに来られたということは、治ったわけですね」
「あぁ、ジュリアにはとても感謝している」

続いて入ってきたモーゼスが言葉を受けて応えた。
長い間苦しみ、恐怖してきた要因を治療し、今やっと訪れた経緯をあらまし説明する。

 

「ねぇねぇ、サヤとカイは?」

話し相手であるハジをモーゼスに持っていかれて暇なのか、ルルゥはきょろきょろとあたりを見回して訊ねた。
そんな仕草に小さく口元に笑みを浮かべ、少し困ったような表情をしてハジは言った。

「小夜とカイは今、学校です。午前中の授業ですから、しばらくすれば戻ってくると思いますよ」
「学校?!」

ハジが言った言葉に、眼をきらきらと輝かせてルルゥは身を乗り出す。
以前から、小夜が話す『学校』に興味を抱いていたらしく、どう行けばそこへたどり着けるかをハジに問い、説明される道のりを一生懸命覚えてゆく。

 

「モーゼス、行ってみよう!」
「そうだね、僕もどんなところか見てみたい。カルマンはどう・・・」
「あれ?」

振り返れば求める姿はなく、半開きになったドアだけが映る。

「カルマン?」

ルルゥは小走りにドアまで行くと、ひょっこり顔を出すようにして来た道を見返した。
見れば複数の荷物を持ちながら、よろよろと炎天下の中を歩く姿。


「大丈夫?」
「・・・んなわけ・・・あるか・・・」

息も絶え絶えにたどり着き、なだれ込むように店の中へ直立不動で倒れてくる。
すかさずモーゼスが支えにまわり、床に顔面直撃は免れた。

 

「クソっ・・・何で・・・俺が、こんな目に・・・」
「あんたが負けたんじゃん」


――――じゃんけんして、負けた奴が荷物持ちな!


遠い意識の彼方、楽しげにそう言っていた自分を思い出す。


思い出して言い返せなくなったのか、ぐったりと沈黙してしまったカルマンを、病気か何かのせいだと勘違いしたモーゼスは、わたわたと様子を伺いつつ、縋るような眼でハジを見上げる。

「・・・水をどうぞ」

助けてくれと無言で訴えかけてくる眼に、ハジはそう言って、大量の水を差し出した。