〜dream in Okinawa〜

 

 

「へぇ〜ここが沖縄か〜」

嬉々として飛び込むように降り立ったのは髪の毛を二つに束ねた小柄な少女・ルルゥ。
続いて二人の青年がはしゃぐ少女に続いて降り立つ。

 

「あっつい!!」

扉が開かれた数秒後、一際大きな声が辺りに反響し、周りの雑音を静寂へと変えてしまった。


周囲にいる全ての人の視線を集めたのは、言うまでもなく赤いフレームの眼鏡が印象的なカルマン。
しかし当の本人は自分のことでいっぱいいっぱいらしく、荷物を放り投げて温度調整のしっかりしたフロアへすぐさま踵を返す。
それを見てルルゥは慌てて引き止めに掛かった。

「ちょっ、何処行くのさ?!・・・っていうか叫ばないでよ!!恥ずかしいじゃん!!」
「それどころじゃない!!お前、この暑さは異常だぞ!!」

ルルゥがカルマンの服を掴み、頬を紅潮させながら見上げて小さく怒鳴った。
が、言われたカルマンは、ルルゥの言い分が癪に障ったのか、さらに声を張り上げて言い返す。

大人げない。

しかも周りが明らかに迷惑そうな顔をしていることにも気付いていないようだ。

 

「カルマン、いい加減にしてくれ」

うんざりといった表情で騒ぐ二人に割り込んだのは、カルマンの唯一のストッパー・モーゼス。
少々あどけなさが残るモーゼスの可愛らしい顔立ちを、カルマンは一瞥し舌打ちひとつ落とすと、再び放置しっぱなしの荷物を拾って、さっさと出口へと向かって歩き出してしまった。

「飛行機の中であれだけ騒いで、まだ騒ぎ足りないのかな?」
「さぁ、どうだろう?」

どうやら飛行機の中でもひと騒ぎあったらしい。
なんとも迷惑な話である。

 

「狭いとか耳が痛いとか、すっごくうるさかったじゃん」

他にも、食事がまずいだの眠れないだの・・・と指折り事例を挙げ続けるルルゥに、モーゼスは思わず笑ってしまう。

「ほら、早く行かないとカルマンがまた騒ぎ出すかもしれないよ」

言えばぴたりと止まる指。
一拍おいて聴こえてくるのは案の定、遅いと怒るカルマンの声。

二つにくくった髪を揺らして、顔を真っ赤にしたルルゥは去っていったカルマンのあとを跳ねるように追う。
モーゼスはそんな二人の後姿を見て自然に頬を緩め、ゆっくりとした足取りで同じくあとを追った。