「女神の月」―Die Einsamkeit und die Liebe―

 


     序章

 

「我らの姫君がお生まれになったそうだ」
「一族の希望と謳われるお方だと」
「あぁ、なんと良き日かな」
「お祝い申し上げねば」
辺りにざわめく歓喜の声。

 

「おい、聞いたか?姫君は双子だそうだ」
「なんと?それは本当か?」
「ならばよりいっそ喜ばしい」
「しかし、その姫君たちは正反対のお力をお持ちなんだとか」
その言葉に周囲は静寂を取り戻す。

 

「どちらがどのお力を持っておられるか、それはわからないのか?」
「わからないから問題なんだ」

 

その日、生まれた双子は完全な祝福の中にはいられなかった。