アカ と アオ その2色だけ
モノクロに叫ぶ愛の色は 消毒液の、ニオイが、する。 「……む、くろ?」 声? 懐かしい、ひどく求めた、声? ゆっくり呼吸を繰り返しながら、 重い瞼を無理矢理押し上げ、白く霞んだ世界に声の主を捜した。 「むくろ、骸!」 瞬きを繰り返し、鮮明になった視界に、 飛び込んできた鳶色。 白い顔で、琥珀色の眼を潤ませて、桜色の唇を噛み締めて、いて、 夢かと、思った。 「……つ、な…?」 「分かる? 覚えてる? なぁ!」 「おかしなことを、いう…ぼくが、きみをわすれるわけないでしょ…?」 喉が渇いているのか、声が上手く出せない。 けれど必死に、伝えて、微笑めば、 僕の顔を覗きこんでいる眼から、涙が零れ落ちてきた。 その雫が僕の顔を濡らす感覚が、ある。 感覚がある。 耳鳴りがしない。 首を動かして、手を動かして、自分の身体であると、理解。 「……ここ、は?」 「ボンゴレ本部の、俺の部屋…無理言ってココに運んでもらっちゃった。」 僕の声に、 涙を拭い取りながら、綱吉が答える。 その、彼に視線を合わせて、 「……ぼくは?」 「うん、もう、大丈夫だよ。もう、自由だから…ちゃんと手続きもしたし、」 「クフ…正式な手続きで、きみは、傷つかないでしょう…?」 色のついた世界に、 目障りなほど白く映える、彼の手に、眉を顰めた。 気付いた綱吉が隠そうとしたのを、重い腕を上げて、掴まえて、 包帯と消毒液のニオイに包まれた手を、握った。 「……無理を、させてしまったのですね、」 「…無理じゃないよ、ただ、骸を見つけて、俺が勝手に暴走しただけ。」 本当に手続きもしてるし、復讐者も了解してる。 そう言いながら、笑うその表情は、 偽りなどなくて、 仮に偽りがあったとしても、 握った手の体温が、嬉しくて、もうどうでもいい気がする。 「あ、骸、右眼は?なんか凄いことになってたんだけど…」 「ああ、あれで一応、僕の能力を押さえていたようですからね、」 「み、見える…?」 握っていた手に、力が込められ、 不安げに覗きこまれたので、微笑んで、返した。 「見えていなければ、僕は笑いませんよ。」 だいぶ喋ることにも慣れてきた喉で囁けば、 綱吉が、嬉しそうに笑って、頷いた。 「で、でも、身体も、痛いところとか、ない…?頭とか…」 なのに、すぐに不安に顔を歪めて、 慌てた様子で僕の顔を見下ろしてくる。 「お前、こういう時は我慢とかするなよ…!」 「クフフ…心配症ですね…」 「あ、あんな風になってるヤツ見たらだれだってそうだろ!!!!」 まぁ、客観的に見れば、引きますよねあの拘束。 でも本当に、 「今は、」 「ん?」 「すごく、気分がいいです。」 泣きそうなくらいに。 言いませんけれど。 君の声が、僕の耳で聞こえる。 君の顔が、僕の眼で見えている。 君の体温を、僕の手が感じている。 僕が君の傍にいる、君が僕の傍にいる。 一度眼を閉じて、開いて、 それでも視界にある君の微笑みに、眼を細めた。 「綱吉、1ついいですか?」 「なに?」 「喉が、渇きました。」 「ああ、だよな!ちょっと待って、水……」 僕の手を離して立ち上がろうとした綱吉の腕を、 なかなか力の入らない手で掴んで、止めて、 どうにか、引き寄せた。 「ちょ…ッ」 「水では、潤いませんよ、」 僕の上に引き倒して、 まだ幼さの残る顔に手を添えて、柔らかな髪に指を埋めて、 唇が触れてから、眼を閉じた。 暫くは、ただ触れ合わせたまま。 久しぶりに温かさと匂いを感じて、軽く吸って、 僅かに開いた眼で、真っ赤になっている綱吉を見つめる。 「―― 綱吉?」 声になったか分からない声で囁けば、 そっと開かれた俯き加減な眼が、瞬いて、許してくれて、 薄く開いた唇に、僕の舌を這わせた。 逃げそうになった頭を手で引き留めたまま、 零れそうになる唾液を呑み込んであげて、もっと欲しくて、 綱吉の香りに溺れそうになりながら、久しぶりに感じる熱さに、舌を絡めた。 不意に、 綱吉の手に髪を掴まれて、僕に体重を預けるように圧し掛かってきて、 眼を開けば気持ちよさそうに、夢中になっている顔が、あり、 思わず抱き締めたまま、体勢を逆転。 少し、身体が軋みましたが、 気にせずに彼の口から唾液を溢れさせていたら、 「――ッ、がっつくな!」 さすがに、押し戻されました。 「なん、で…そう元気なんだよお前…ッ」 「まだキスしかしてませんよ。」 「しつこいんだよ!お前のキスは!!!!」 僕の胸に腕を突っ張ったまま、呼吸を整えている姿が、 不服ですが、可愛いから許してしまいたくなる。 「僕のって…比較する相手がいるんですか?」 可愛いついでに、 からかいたくなるでしょう? 微笑みながらの僕の言葉に、真っ赤になって見上げて、 すぐに眼を泳がせて、 「……いるわけ、ない、だろ。」 僕が望んでいた答えに、また喉が渇く。 ですが、 「クフッ、期待に添えなくて申し訳ありませんけれど…」 「期待ってなんだよ?」 「今日はキス以上はしてあげられないみたいです。」 「そんな期待してない!……って、」 やはり、久しぶりに、動きますからね、この身体。 綱吉の上に、重いかもしれませんけど許して下さい、倒れこんだ。 「え、ちょ、骸??!!」 「…大丈夫、少し疲れただけです…」 「じゃあキスなんてするな!!!!」 ええ、ごもっともですけど、無理でしょう。 実体化したとしても、結局それは僕ではありませんし、 この身体で、ちゃんと君にキスするのなんて、初めてじゃないですか、もしかして? 「……夢の中では、飽きるほどしたのにね、」 「……これからは、現実だよ。」 溜息と一緒に、 茶化されるとばかり思って呟いた言葉なのに、 圧し掛かったままの僕の身体に、綱吉の腕が、まわされた。 「もう、いやだ、」 「綱吉…?」 「夢だけなんて、ヤダ…ッ」 包帯に包まれている手で、僕の背中が掴まれる。 しがみつくように抱き締められて、 潰さないように、肘で身体を支えながら、鳶色を指に絡めた。 「―― 復讐者の牢獄で、お前見つけた時、」 僕の肩に顔を隠したまま、 痛いくらい抱き締められたまま、 「本当に、暗くて寒い所に、いて、早く、出してあげたくて、」 吐き出される震える声を、必死に、聴く。 「ちゃんと出すって言われたけど待ってらんなくて、気がついたら、自分で壊してた。」 僕を掴んでいる手が、震えた。 「なのに、お前、眼開けないし、身体とか本当に冷たくて…ッ、なんですぐ起きないんだよ…!」 「…スイマセン、」 抱き付いている身体を抱きかかえたまま、横に倒れて、 痩せてさらに細くなったように感じる身体を抱き締めた。 嘘だと思っていたなど、 自分が都合のいい夢を見ているだけだと、 そう思って、なかなか戻ることができなかったなんて言えませんね。 もし、この身体に戻って眼を開けて、 その先が歪んだ闇のままだったら、僕は僕を保てる自信がなかった。 もう、僕も、限界だったんですよ、 「でも、ここにいますから、」 「……ん、」 「ここで、ちゃんと、君を抱き締めていますから。」 腕の中で震える身体に、髪に、 鼻を埋めて、顔をうずめて、 「…ただいま、綱吉。」 囁くと、 僕の胸を押して、顔を上げた綱吉が、 濡れた眼のまま僕を見つめて、微笑んだ。 「おかえり、骸。」 柔らかな声に、滲んだ視界に眼を閉じ、 抱き締めたまま、暫く、額を合わせたまま、 「愛しています。」 「うん、愛してる。」 それ以上の言葉は、必要ない。 ほら、君が笑うと、 僕の世界に色が戻ってくる、温かくなっていく。 抱き締めた身体は、温かくて、 感じる匂いは、変わらなくて、 世界に足りなかった色、 それだけでモノクロになっていた世界に、光が取り戻されて、 たった2色、必要な2色、 アカとアオに見つめられる、愛される、 それだけの世界を、必死に俺は望んでた。 その2色だけで、 俺の世界はフルカラーに戻る、なんて、 なんて単純な、大切なセカイ END
* * * * 2007/06/29 (Sun) 女 神 再 降 臨 し た !!!!! むしろ天からご褒美が降って来ました。 何もしてないのになっ?!!おかしいな?!! 女神様、施ししすぎじゃないですか?! 私、女神の信者様方からフルボッコされちゃいますよ?!!バッチコ――――イ!!!(混乱中) えと、『萌えた俺が悪いのか』の咲祈様より、相互御礼頂きました!!!! ありがとうございまぁぁぁ――――す!!!!! 前も言いましたが、何度も言いますが 前回頂いたのが相互御礼だと思ってました神様!!!!! えー…頂いたときには、思わず別窓でもう一度メルフォの内容を確認したくらいです とても驚きました、幸福すぎて怖い、ってこういうことだったんですね★ もうね、まさかの続きでハッピーエンドですよ!!!! しかも我らが悲願の『骸様お帰りなさい』な展開ですよ!!! さっすが私の女神、やることが違います そして、この素敵小説に個人的にきゅんVvvって来たのが、『見えていなければ、僕は笑いませんよ』笑う骸さんVvv その一行だけで萌え死ぬかと思った… そうですよね、ツナが見えなければこの人に心から幸せな笑顔なんて、はありえませんよね!!!! はい、遠まわしで盛大な惚気をありがとうございます、おいしすぎてそれだけでお腹一杯です喰い切れないっ! あと、アカとアオの2色で色が戻るということはですね、3原色に則って、ツナが黄色なわけですよね? 骸ツナが交わればフルカr(殴) すみません、いい話ぶち壊してごめんなさい大好きですVvvv えー…すっ飛びましたが、改めて、素敵な作品をありがとうございます!!!!! こちらこそ頂きすぎじゃないかと…いえ、返しませんが← 最後に。 愛してます、女神様っ!!!!! こちらこそ、大好きですっ!!!!ありがとうございました!!! 新月鏡
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