極彩キミ













君を見た瞬間、
僕の世界に色がついた。

君の声を聞いた瞬間、
僕の世界からノイズが消えた。





君が、世界を創った。







「…ね、綱吉。」

きっと、今、僕は笑った。
くだらない思考から、現実に戻って、
まだ隣で眠っている綱吉を見つめる。
布団から鼻から上だけ出しているだけで殆ど顔は見えませんけれど、
カーテンから透けて届く朝日に照らされて、
ああ、可愛いですよ。

「クフフ、でも、もう起きないと遅刻ですね、」

下の階からはすでに他の住人のにぎやかな声もするというのに、
起きる気配のない君は、
大きな眼を隠したまま、まだ夢の中にいる。

「起こしてあげてもいいんですけれど……やっぱり、やめておきましょう。」

まだ、見ていたいですから、君の寝顔。
本当に、
幼いというか、何と言うんでしょうね?
愛しくて、抱き締めたくて、
ずっと見ていたいんです。

透けるように白い肌。
柔らかなぷっくりとした頬。
それにかかった鳶色のくせ毛。
自分ではどこにでもある顔とか言いますけれど、
一見すると性別を判断するのも危うい愛らしさを潜めていて、
僕にしてみれば、
どんな聖母像よりも胸を突く。

現に今、
苦しいほど愛おしいんですよ綱吉。

「綱吉は、いつでも可愛いですけれど、寝顔は格別ですね。」

返事は返ってきませんけれど、
きっと起きていたら殴られているんでしょうね。
真っ赤になって、
僕に暴言を吐きながら、
一見腕力なんて無さそうなのに、意外なほどに重い拳を飛ばしてくる。

それすら、愛しいなんて、
僕、君に会ってからMでも行ける気がしてきました。

「まぁ、綱吉相手なら悪い気はしませんけれど、」

クスリ、微笑んで、
そっと、手を伸ばした。

「……あたたかい、」

柔らかな髪に、指を絡める。
寝癖の付いている頭を撫でる。
その行動の、
フリ。

「の、でしょうね、君は。」

こんなに近くにいるに、
触れられないんですよ。不思議でしょう綱吉。
僕の手は、
君の身体をすり抜けて触れることができないんです。

「…きっと、僕の声も聞こえていないのでしょう。」

苦笑。

「…でも、君はきっと、起きていたら僕の気配で気付くでしょう?」

もしかしたら、
今も気付いているのかもしれませんけれど、
けれど、
知らないままでいて下さい。

「クフッ、結構、この状況って苦しいんですね、」

それも、君に会って初めて知った感情ですけれど。
まさかこんなに、
触れられないだけで、苦しいだなんて、
こんな気持ち、知らなかった。

「苦しいのは、僕だけでいいんです。」

きっと、
まだ気付いてないでしょう?
お願いですから、
気付かないままでいてください。

「…また、会いに来ますね。」

微かに彼の目蓋が震えたのに気付いて、
綱吉の隣に寝そべったまま、微笑んで、

「おはようございます綱吉、」

眼を閉じて、

「……おやすみなさい。」

もう一度開けた時、
僕が見る光景は、水に歪んだ暗い闇。


苦笑すら、
気泡に消えた。


今は、
幻のような『夢』でしか会えないけれど、
僕はもう一度、君にこの手で触れたい。

君をこの眼に映したい。

耳鳴りしか作り出さない鼓膜を、
どうか君の声で震わせて。
今は感覚の無い指先を、
君の体温で温めて。


許されるのなら、愛して、










「オイ、ダメツナ、いつまで寝てやがる!」

リボーンの声がする。
けれど、

「…いい加減、朝から泣くのやめろ。」
「ん……ごめ、ちょっと待って…」

骸の気配が消えたベッドの上、
骸の匂いがする気がして、布団を抱きしめたまま。

「今日…は、」
「ん?」
「今日は、いつもよりも、少し長くいた気がするんだ、」

リボーンが黙った。
本当はすぐに、笑わなきゃいけないのに。

「あいつ、結構、元気だよな、」
「…遅刻だぞ、」
「ぅん、わかってる、」

ドアの閉まる音がした。
きっと、後でまたリボーンに怒られる、けど、
今は、泣いていいって、許されたみたいだから、

「――…ッ!」

呼吸できないほど、キツク、布団抱き締めて、顔押し付けて、
声だけは押し殺して、
心の中で何度もあいつを呼んだ。





声は聞こえないけれど、
でも気配だけは感じていて、
眼を開くともう気配も消えてしまっているけれど、

でも、お前はそこにいたんだよな?

俺がもたもたしてるから、
会いに来てくれてるんだよな?



待ってて、
まだ、時間はかかるかもしれないけれど、
俺は、
お前のこと迎えに行くから、絶対。



俺の世界から消えたモノ、
奪い取りに行くから。










(……僕の世界は、君がいるから、存在する、)

広がる闇は見つめていても変化などしない。
くだらない闇。
眼が機能しているかすら危うくなり、
もう一度、閉じる。

(ねぇ綱吉、)

留まっていても何も面白くなどない身体。
だから僕は、
今日も『夢』を歩きまわる。

君に教えられた色の世界を。

(いつか、君という極彩色で、僕をもう一度包んでくださいね。)





世界にただ唯一の色、
唯一つ、彩るための存在。

極彩色に輝く、キミ。















END

 

 

 

 

 

* * * *

2007/05/06 (Tue)

これはヤバイだろう!!!!!!!!

あ、失礼しました。
えと、『萌えた俺が悪いのか』の咲祈様より、びっくりするぐらい胸キュンな骸ツナ小説頂きました!!!!
新月が消失気味で死にそうになってた間に……まさかこんな素敵贈り物に恵まれるとは…誰が想像しただろう?!!
神すら凌駕したよね、運命って素晴らしい!!!!!(おかしくない?)

にしても、初めて読ませていただいたときには、本気で目頭熱くて……泣いてしまう…。
逢いたくて、それでも逢えなくて…骸さんの痛いくらいの優しさが見てて切ないorz
夢だと幻だとわかったときの消失感が、儚さとやりきれない感じでいっぱいいっぱいなんですよ!!!
ホント、読んでるこっちまでいっぱいいっぱいだよっ!!ちくしょう好きだぁぁぁぁ―――――!!
えぇ、マジで……本気でこの頂き物に基づいた漫画を描こうかと思ったくらいです。
でも、思うままに描いてたので没行きでしたが…orz

それにしても、咲祈様はホントに神ですね★!!
素敵過ぎる贈り物をありがとうございました女神様!!!!!

もう愛してるを通り超して、信仰してもいい

そして、お返事等々遅くなったにも拘らず、KAITO兄さんにまで反応していただけて幸せです!!!!!(兄さん関係なくね?!)
咲祈様が嵌ってるとわかっていれば、色々オススメしましたものを…!!(えぇぇぇ;;)
あ、本題ズレズレで長ったらしくてすみません。
本当に…本当にありがとうございました!!!!!!!
ごちそうさまです★


新月鏡