「precious day」

 

 

 

特別な日って聞いて、いったい何を思い浮かべるだろう。

たとえば国の記念日だったり。
たとえば伝統の祭だったり。

たとえば出会いの日だったり。
たとえば別れの日だったり。

一概に特別と括っても、意味合いは色々あるわけで。
変わらない日常をくり返していた僕は、慌しくやってきた特別な日に呆然としていた。

 

 

 

朝起きて、いつもの日課で身体を動かし、食事を食べて出勤。
職場で何事もなく研究に熱を入れる時間は、あっという間に過ぎていって、親友が定時連絡よろしく昼時を告げに来て、ようやく食事を思い出す。
そんな昼の時間から、僕はどことなく違和感を感じていた。
心がざわめいて落ち着かず、奇妙な感覚に思わず顔をしかめてしまう。

「どうかしたのか、ジュード?」
「え?」
「なんかあったか?」
「うぅん、何もないと思うけど……むしろ、今日は研究が順調に進んでるくらいだし」
「ふーん……まぁいいけど。何かあったらすぐ言えよ?」
「うん、ありがとう。……ふふっ」
「何だよ」
「いや、最近ノーヴェが似てきたなーって」

誰に、とは言わずにほのめかすと、気づいたノーヴェが少し嬉しげに笑う。
ほのめかした『誰かさん』に心底憧れている様子が微笑ましい。
だが、そんな心温まるやり取りの裏側で、自分の中に、どうにも腑に落ちない感覚がざわついていることも確かだった。
心配げに問うてきたノーヴェに笑って否定したものの、心に残った違和感は消え去るはずもない。
いったいなんだというのだろうか。
実体のない不安すら感じ始めた僕は、慌ててそのもやもやした不安を追い払って、考えないように勤めることにした。
なんだかよくわからないが、今日は慎重に行動しよう。
そう心に決めて、未だ手がつけられていなかったランチに手を伸ばした。

 

その時、気づけばよかったのだ。
感じていた違和感が、悪いものではないのだと。
長年培い続けて麻痺した感覚が、解き放たれたように騒いでいただけだということに。
だが、それに気づけなかった僕は、それが悪い予感だと信じ込んでしまっていて、その日一日を平穏無事に過ごすことばかりを考えてしまっていた。

だから、信じられなかった。


疲れ果てた身体を引きずって帰宅した僕を待っていた光景が。

 

 

「おかえり、ジュード」

ふらふらと帰ってきた家の前、玄関のドアを開いた途端、僕は抗いきれない力に腕を取られて引きずり込まれた。
誰もいないはずの真っ暗な場所で響く低い声。
次いで、視界を遮る大きな手のひらに身体が硬直する。
最初は警戒から。
今は驚愕から。
だって、まだずっと先の予定のはずなのだ。
おとつい「行ってくる」と言って出かけて行ったのだから、帰ってくるのは1旬後で、ここにいてはいけないはずで。
いるはずがなくて。
なのに。

「……ど、う、して……?」

そろりと視界を塞ぐ手をずらして振り返れば、暗闇でもわかるくらい優しい顔をしたアルヴィンがいて、さらに混乱に手招かれる。
なんで、どうして。
いくら自分の中で探っても、該当する理由が見当たらない。
ゆらゆらと揺れる心を映すように、頭の中も靄がかってしまって、うまく思考がまとまらない。
柔らかに向けられる眼差しをただ見つめ返すしかできなくて、呆然と魅入られたように見つめていると、真意を隠すようにまたアルヴィンの手が両目を覆ってきた。

「いきなり何!?さ、さっきからなんで目隠しするのさ!?」
「んー、理由はすぐにわかるさ。ちょっと我慢な」

いたずらする悪ガキのような弾んだ声に、ぞわりと寒気が背筋を駆ける。

「なっ、何する気っ!?」
「そう身構えんなよ、危害を加えようってわけじゃねーんだから」
「いやだ!離してよ、アルヴィン!」
「ダーメ。いい子だからさ、今はおとなしくしてろよ」
「わけわかんないっ!っじゃなくて、アルヴィン仕事はどうしたの!?」
「仕事なら、ある意味たった今してるかなー」
「茶化さないで!本気で怒るよ?」
「はいはい、疲れてるのにそんなに暴れなさんなって」
「アルヴィン!」

ずるずると僕の身体を引きずって運びながら、悪びれもせずからからと笑うアルヴィンの意図がわからない。
ぎゃぁぎゃぁと騒ぎながら暴れまわってみても、酷使した疲労で身体はまいっている上に、がっちりホールドされては手も足も出ない。
試しにかかとで爪先を踏んづけてやろうとしたら、渾身の一撃は望んだものを踏み潰すことなく、鈍い音を立てて床に直撃した。
どうやら上手い具合にかわされたらしい。
腹が立つ。
あまりにも歯が立たないので、恨めしいやら嬉しいやら憎らしいやらで、心の中がぐちゃぐちゃだ。
自分の家の中なのに自由が利かず、視界も奪われているため、音と触れる感覚だけが情報源で、正直怖い。
離せと自分で言ったくせに、いつの間にか彼の袖をしっかり掴んでしまっているのがいい証拠だ。
だが、それも認めたくないので、ずるずる引きずられる間ずっと騒ぎ立てて誤魔化し続けてる。
格好悪いし恥ずかしいし、何より疲れ果てた今の心にこの仕打ちは、酷く僕を不安にさせるのだ。
真っ暗な視界の中で気持ちが完全に折れそうになったとき、がちゃりとリビングのドアを開ける音が響いた。
途端、なんとも香しいいい匂いが漂ってきて、僕の意識はアルヴィンからズレ落ちる。
あれ?何だろう、この匂い……どこかで……。
そう考え込んだ瞬間、

「『「ハッピーバースデー、ジュード!」』」

カッと溢れた光の波に、複数の声がわっと押し寄せる。
次いで連続して起こる小さな破裂音と共に、何かが頭から降って絡みつく。

「えっ!?わ、何これ!?」

拘束を解かれ、引きずり出されるようにアルヴィンに立たされた僕は、急激な変化に言葉を失って瞬くしかできない。
頭から垂れる細長い紙のリボンが絡まって、はらはらと赤や黄色の小さな欠片が落ちていく。
紙吹雪で彩られた視界の中に、遠く離れた場所にいるはずの懐かしい面々が佇んでいて、にこにこと満面の笑顔を向けられる。
異常な現状に目を白黒させつつ、眩しい部屋の光に段々慣れてくれば、今度は自分の家の変わりように目を剥いた。
リビングのあちこちに手作り感溢れる飾りが散りばめられ、いつものシンプルな様子が激変している。
よくまぁここまで賑やかにできるものだ。

「…………どういう、こと……?」

混乱と感心と驚嘆とが交じり合った率直な感想に、手にしたクラッカーをローエンに預けたエリーゼがこちらへ駆け寄ってくる。
ぱたぱたと足音を立てるたびに、薄桃色の裾がふわふわと揺れて可愛らしい。
現実逃避のごとくあらぬ方向へ感想を抱いた僕の元まで来ると、エリーゼはきらきらとした眼差しで僕を見上げた。

「今日は、ジュードの誕生日ですよね?」
「え……?」

問われてぴんとこなかったため、『確認のために念押しされた』にも関わらず、僕はぽかんとしてしまった。
誕生日……誕生日……?
ゆるく首をめぐらせて、壁にかかったカレンダーを見やる。
今日の日付は、確かに自分の誕生日なようだ。

「あ、うん、そういえば……そうみたいだね」
『だから、お祝いしに来たんだよー!』
「ティポ!?」

はっとして身構える前に、底抜けに明るい声に頭からばっくり喰われた。
ティポの触り心地のよい感触と引っ張ってもなかなか解放されない感覚が、一気に懐かしさを呼ぶ。
大事な物入れに仕舞いこんだと聞いていたが、今日のために連れてきてくれたのか。
ティポの再会の吸いつきから解放されると、満足げなティポを腕に抱いたエリーゼがにこりと笑う。

「ジュード……お誕生日、おめでとう、です!」
「……エリーゼ」
「ジュードは、私に特別な日をくれました。だから私も、ジュードの特別な日をお祝いしたかったんです」

ぎゅっと大切に抱くような仕草に、ふわりと胸が温かくなる。
勝手な思いつきで作ってしまった記念日を、彼女はとても喜んで受け取ってくれた。
そしてその気持ちを、今度は僕に返してくれようとしているのだ。
少女の優しい思いやりに、自然とこちらの笑みにまろみが帯びる。

「そっか……ありがとう、嬉しいよ」
「ジュードが嬉しいと、私も、嬉しいです!」
『エリーゼの特別な日を祝ってくれたジュードに、僕たちからお祝いー!ゲプッ』
「おそろいのリボンなんですよ。きっとジュードに似合うって、私、一目見たときから確信してました!今度一緒につけて遊びに行きましょう!」
「エ、エリーゼ?」
「約束ですよ?」
「わ……わかったよ」

ゆっくりと手渡す小さな手と愛らしい声に、脅すような印象を受けるのは何故だろう。
底知れない寒気を僅かに感じながら、僕は手のひらにのせられたプレゼントを見つめる。
受け取ったプレゼントは、フリフリのレースがふんだんにあしらわれた、それはもう可愛らしいことこの上ない薄紫色のリボンだった。
エリーゼのドレスによく似合う可愛いアイテムだが、果たして自分に合うだろうか。
それより、『おそろいのリボンをつけて遊びにいく』と言っていたが、このリボンを何処にどうつけるのか全くといっていいほど見当がつかない。
どんな服につけても、リボンの方が華やいで衣装を喰ってしまいそうだが、まさか頭につけるとかないだろうな。
少しだけフリフリレースの可愛らしいリボンをつけた自分の姿を想像しかかって、やめた。
想像するのも恐ろしい、考えないでおこう。
小さく頭を振って追い出していると、タイミングを読んだかのように、物腰穏やかなローエンが歩み寄ってきた。

「お誕生日おめでとうございます、ジュードさん。私も誕生日プレゼントを考えていたのですが、どうにもジジイに流行りの品は思い浮かばなかったので」
「いいよ、そんな」
「手編みのカーディガンにしてみました」
「手編み!?」

すらりと取り出されたカーディガンの出来栄えに、手編みと聞いて驚愕する。
ぎょっとしつつ、差し出されたカーディガンを怖々と受け取ると、予想外の軽さにローエンとカーディガンを交互に見やった。
軽い。
軽すぎる。
丁寧に柄まで編みこまれたカーディガンは、羽毛のように柔らかな手触りで、とても軽い。

「通気性を考えて細い糸を使用しておりますので、この時期にも使えると思いますよ。糸と編み棒さえあればできるお手軽なもので申し訳ありませんが」
「お手軽!?細かい柄まで編みこんでるのに!?」

がばっと面を上げてローエンを見つめ、すぐさま手元へ視線を落として凝視する。
袖の部分にうるさくない程度の幅で濃淡の矢じり模様を挿し、襟には2重の細いライン。
裾にあしらわれたチェック柄の帯の間に、均等に配置されている繊細な花紋様は、控えめな華やかさを添えている。
男女兼用で使えそうなシックなデザインが、かえって装飾柄の持つ魅力を引き出しているようだ。
絶妙な柄の配置と配色、まさに職人技。

「やっぱり凄いや、ローエン!」
「この程度の編み物、ジジイの手にかかればちょちょいのちょいです」

ふふん、と得意げに笑うローエンに、僕は尊敬の念が絶えない。
裁縫に関しては、外れたボタンをつけられればいい程度の力量しか持ち合わせていない僕にとって、神業としか言いようがない出来栄えに、思わずため息が漏れる。
凝り性のローエンのことだから、使用されている糸もどれほど値の張るものなのか。
考えただけで金額がおかしなことになりそうだ。
つまり、この手に渡ったカーディガンは、サンサーラ商館の一流ブランド店に並んでいてもおかしくないレベルのものだということか。
伝説の指揮者から、とんでもなく高価なプレゼントをもらってしまった。
あわあわと金額不明の高価なカーディガンを扱いあぐねていると、僕の意識を全力で掻っ攫うように、弾けるような声が呼ぶ。

「ジュード!ジュード!あのね、誕生日おめでとう!わたしからもプレゼント!今年こそはってリベンジ考えてたんだよ!」
「リベンジ?」
「そう!この、誕生日限定メニューのリベンジ!」

じゃじゃーん!と効果音まで盛大につけて両手を広げたレイアが示した先には、見慣れた食卓の上に所狭しと並べられた料理の数々。
スープ、香ばしい焼きたてのパン、みずみずしい彩のサラダ、そして、なかなかお目にかかることのない、チキンをまるごと使った誕生日限定の幻のメニュー。
幻、は言いすぎかもしれないが、食べ損ない続けてきた僕にとっては、『幻』以外のなにものでもない。
ぱりっと焼いた皮から立ち上るいい匂いに、疲れを忘れた現金な身体が空腹を訴える。

「夢じゃないんだ……。この年でレイアのお父さんのチキンが食べれるなんて……実はちょっと諦めてたんだ。いつもレイアが途中でこけて……」
「それは忘れてよ!」
「あれだけ狙ったようにくり返されると、忘れたくても忘れられないよ」

僕のためにと急くあまり、何度も宙を舞って大地へ還ったチキンを思い出して苦笑する。
レイアに悪気がないとわかっているから、残念だとは思っていたが、怒ったり拗ねたりなんてしたことはなかった。
むしろ、僕以上にレイアが後悔してしょげてしまうから、いつの間にか限定メニューはなくて当然、もしくはレイアのパフォーマンスがあって当然、と思うようになってしまったのだ。
そんな限定メニューが、通過儀礼をすることなく食卓に鎮座している。
これは奇跡と言っても過言ではない。

「わたしだって、毎年すっごく反省してたんだから!その証拠に、今年は反省を活かして、ちゃーんとテーブルにあるでしょ?」
「確かに。今年は落とさなかったんだね」
「ざーんねんでしたー!ふっふっふ、今年のわたしは一味違うんだからね」
「何が一味違う、だ。俺が運んだんだろうが。『企画担当するから任せたー!』とか言って逃げたの何処のどいつだよ」

どさりと背後から重みを感じたかと思えば、アルヴィンが会話に割り込んできた。
僕の肩に手を回して引き寄せると、得意げな笑みで見つめてくる。

「わわっ、何でいらないことバラすの、アルヴィン!」
「見栄張りたいのはわかるが、嘘はよくないぜ、レイア。嘘つきは泥棒の始まりだろー?」
「大泥棒のくせに、どの口が言うのよ」

ぎゃんぎゃんと頭上で交わされる言葉の応酬にきょろきょろと視線を彷徨わせて見守る。
どうやら無事に届ける自信を失っていたレイアの代わりに、チキンを届けるという重役は、アルヴィンに任されたらしい。
たぶん、仕事が運搬配送の事業だからとか安直な考えで抜擢されたに違いない。
だがしかし、チキンを届けられないことが、レイアにとってはそんなにトラウマなことだったのか。
しみじみとレイアの気持ちを考え直しつつ、収まった頃合を見てアルヴィンを振り仰ぐ。

「アルヴィンが、わざわざ運んできてくれたんだね」
「そ。だから『ある意味お仕事してる』って言ったろ?」
「僕を連れてくることも?」
「それは俺への報酬」
「報酬?」
「特権だよ特権。いいねー、本日最初のサプライズ仕掛け人って」

にやにやと笑って見下ろしてくる視線は、至極楽しそうでイラッと来た。
なるほど、一番最初の仕掛け人とやらをやらせる条件でレイアの依頼を受けたのか。
僕はわけがわからなくて、恐怖すら感じていたというのに、そんな気持ちなど露知らず、僕が怯える様を存分に楽しんでいたということか。
なんて人だ。
キッと恨めしげに睨み上げてみたが、アルヴィンはそんな視線など意に介さず、さらに引き寄せ距離を詰めてきた。
あまりの顔の近さに、条件反射で心臓が跳ねる。
だが、そんな僕の態度も見越した上で、にやりと意地の悪い笑みを浮かべたアルヴィンが囁く。

「それとも、俺がいて嬉しかったか?」

言われたセリフに、かっと熱が暴走する。

「っ、馬鹿アルヴィンっ!知らない!」
「おっと、冗談だって、怒んなよ。可愛い顔が台無しだぜ?」

噛みつかんばかりに罵って、引き止める腕を跳ね除ければ、反撃をするりとかわした手が再び僕の腕を掴む。
無駄のない自然な動作が憎らしいことこの上ない。
甘い口説き文句も猛毒らしく、たった一つのきっかけで、片っ端から火がつくようだ。
熱くて、気恥ずかしくて、コントロール不能な自分自身が信じられない。
きっと見せられないくらい顔が真っ赤になってるような気がして、くるりと背を向け顔を隠す。
だが、追いすがる手は容易く僕を捕らえて、向かい合うように方向転換を促された。

「ジュード」
「な、」

なんでもない、離して。


そう、突き放すはずだったのに。

 

「誕生日、おめでとう」

 

僕だけに聞こえるような小さな声が鼓膜を振るわせる。
あっさり僕の視線を絡めとって奪っていくアルヴィンが、殊更優しく穏やかな瞳をしていて、何がなんだかわからなくなってきて。
そして、

「……っ、あ……」
「え?お、おい、ジュード……!」

ほろり、はらり。
熱を帯びた目蓋はじんじんとして、亜麻色の瞳が滲んで溶ける。
まずい、ダメだ。
止めなければとだけ思い至って、ぎゅっと目を閉じれば、弾けるように雫が散って落ちていく。
あぁどうしよう、止まらない。
止め方がわからない。
早く止めないと、アルヴィンが、

「あー!レイア、アルヴィンがジュードを泣かしてます!」
『表へ出ろー!曳き回しの刑にしてやるー!』
「主役を泣かすとはいい度胸ね、覚悟はしてるんでしょーね?」
「え、いやいや!不可抗力!ってか俺の予想と違う展開なんだけど!?」

殺気立つレイアとエリーゼに加え、慌てるアルヴィンの様子に、弁解しようと口を開くが、声すら喉に引っかかって出てこない。
焦燥抱く意識とは裏腹に、緩慢な動きでしか意思に添わない身体に途方に暮れていると、そっと肩を叩かれる。
狂った涙腺をそのままに振り返れば、柔和な笑みを浮かべたローエンが立っていた。

「ささっ、こちらへジュードさん。主役の扱いのなってない輩には近づかないことです」
「っ…これ、はっ、違……あの、ローエン」
「わかっておりますとも」

そう言って向けられる慈しむような眼差しに、弁明する言葉が霧散する。
自分の感情すら把握できていない今の僕には、まともな理論を組み立てるだけの思考回路も残っていないらしい。
どうぞ、と差し出されたハンカチを握り締めて止まってるくらい、僕は混乱していたのだから、当然といえば当然か。
おかげさまで、僕の後ろでティポプレッシャーが炸裂していたなど、欠片も記憶になかった。

 

 

 

嬉しかったんだ。

 

 

本当は、心のどこかで期待してた。
だから、叶わない現実が寂しかった。

寂しいと思いたくなかったから、忘れたフリをし続けた。

 

だけど、大好きな声で愛しげに囁かれた瞬間、押し込めていたものが一気に溢れて止まらなくて。

まさか、嬉しくて泣く日が来るなんて思わなかった。

 

 

「みんな、ありがとう」

 

埃の被った誕生日を、特別な日へと飾り立てた人達へ。

どうかこの気持ちが届けばいい。

 

かすれた小さな声で、僕は強く願った。

 

 

 

 

 

 

* * * *

2012/07/01 (Sun)

誕生日おめでとう、ジュード!

ということで、『ED後、今度こそチキンの丸焼きを食卓に乗せてジュード君の誕生日を皆でお祝いするほのぼの話』でした。
メインのチキンがほとんど出てこないっていうのは、どういうことなんだろうか……(遠い目)
プラス、長ったらしくて申し訳ない。
これでも削った方だと言えば、ドン引きされるだろうか。
うん、ジュードの過去の話とかちょろっと書こうとしてたんだけど、長すぎるので削りました。
ミラ様不在ですが、きっと見守ってくれてるよ、生唾必死に飲み込みながら←
今度社にお供えに行くから許してくださいミラ様w

ゆい様へ。
いかがだったでしょうか。
相変わらずの長さで申し訳ないですが……えぇ、本当に……orz
そして、アルジュを突っ込んでいいのかどうか迷ったけど、結局突っ込みました。
だってED後指定ってことは、望まれてるような気がしt(殴
素敵なリクエストをありがとうございましたVvv


*新月鏡*