「love-in-a-mist -a blind spot-」
本当の意味で、わかってなどいなかった。 何度も確認した事実で、口にすらしてきた。 なのにどうして、他人から言われた言葉ほど、この胸を突いて抉る。 同じ音で、同じ言葉で、わかっていたはずの事実を突きつけられる。 あぁそうだ。 そしてようやく、心が理解する。
「可愛い恋をしてるのね」 大いに端折って話す羽目になった話に、婦人が返した感想は、とても端的だった。 婦人に話したことは多くなく、『相手に告白され、自分もまた好きになったが、放っておけない不安要素が2つほどあって返事ができない』というものだ。 その2つはもちろん、相手を傷つけてしまうかもしれないという不安と、自分を曝け出す不安。 向き合い、逃げないと定めたものの、恐怖に駆られて踏ん切りのつかないのも事実だったので、素直にそう告げたのだが、婦人に『可愛い恋』と表現されて少し引っかかる。 個人的にかなり複雑な心境で煮詰まっていたため、軽く扱われたように感じてしまえば、多少なりとも苛立ちは起こる。 「可愛い、ですか?」 「えぇ、相手を傷つけたくないなんて、可愛いお顔に似合う、魅力的で夢のような甘い恋だわ」 「…………」 何か今、どさくさにまぎれてコンプレックスを刺激することを言われたが、軽くあしらわれるだけのような気がして、突っ込むこともできない。 同年代の人達の中では小柄で女顔かもしれないが、アルヴィンだけでなく婦人にまで『可愛い』と言われるとは思わなかった。 いや待て、婦人からすれば、子供は皆可愛いのかもしれない。 そうだ、きっとそうに違いない。 だから、特別僕がそう見えるなんてことはない。 ぐるぐると思考が脱線し始めた僕をよそに、婦人は軽やかな笑い声を収めて僕を見つめてきた。 「そうね、簡単に教えてあげてあげましょう。相手を傷つけない恋など、恋ではないわ。いいえ、恋以前の問題よ」 突然降ってきた否定の言葉に、僕は弾かれたように視線を上げた。 恋以前の問題? 好きな人相手に、傷つけたくないと思うことは、恋じゃない? どういうことだと凝視すれば、婦人は柔らかく微笑んだ。 「誰かと関われば、どうしても傷つけ、傷ついてしまうものよ。誰も傷つけたくないと言うのなら、誰とも関わらずにいるしかないもの」 僕の無言の問いに返された言葉は、過去を呼び寄せ、心を揺さぶった。 孤独を恐れ、誰かの意思に寄り添って生きてきた僕の過去。 きっと、頭のどこかでわかってた。 婦人の言葉が耳の奥で木霊して消えないことが、何よりの証拠。 僕は、孤独より傷つくことを選び、己の傷を見ないようにして生きてきたのだ。 そして、無視し続けてきた傷跡をそのままに、「誰も傷つかない」道を笑って選んできた。 ――――『だったら、もっと大事にしろよ』 不意に、僕の生き方を悲しんでくれたアルヴィンの表情を思い出して息が止まる。 何故、今この瞬間に、彼を、その言葉を、思い出すのか。 確かあの時も、「傷つけたくない」とくり返していたような気がする。 何かが引っかかる。 何かとても大切なことを、あの時僕は見落としている。 だが、何かがわからない。 僕は、アルヴィンの何を見落としているの? 「ねぇあなた。相手を傷つけたくないというけれど、あなたはその方をちゃんと見ているかしら?」 「え……その、つもり……ですけど」 「では、勘違いしているのは、やっぱりあなたの方ね」 動揺する僕の核心を突く一言を、婦人は事もなげにあっさり言い切った。 本当にアルヴィンを見ているのか、という問いと、勘違いしているという指摘。 やっぱり僕は、とても大事なものを見落としている。 だが、それが何かがわからない。 僕は今日までの半年、ずっとアルヴィンを見てきたはずで。 彼が何を思って僕を求めてくれているのかも、ちゃんと言葉や態度で伝えてもらって知っているはずで。 豪雨のように浴びせる好意を受け取り損ねて見えてない、なんてことはないはずだ。 なのに、僕が勘違いをしていると彼女は言う。 無意識に早鳴る鼓動が、嫌な感覚しか与えなくて、得体の知れない悪い予感に震えた。 芯から冷える身体に、錯覚だと言い聞かせ、不安に揺らぐ自分を叱咤してなんとか立て直す。 だが、婦人から美しい微笑が失せて、眼差しに真剣みが帯びたとき、嫌な予感は見事に確信へと摩り替わった。 「本気でその方のためを想うのなら、相手の優しさにつけこんだ逃げはおよしなさい」 ぴしゃりと叱るような声音に、肩がびくりと揺らぐ。 婦人から目を逸らせないまま佇む僕の足元に、漠然とした恐怖がじわりじわりと這い寄って。 その心地悪さに、後退りして逃げ出したい衝動に駆られたが、意識と切り離されたように身体が動かない。 胸を突き刺す冷えた感覚は、自覚していた残痕。 そうだ、僕は、わかっていたはずだ。 『もう、逃げはしない』と、心に決めた昨日。 アルヴィンの赦しを免罪符に、その優しさに甘えて逃げ続けてきた事実。 僕が見落としていた、いや、見ないようにしてきたものは……。 「あなたは既に、その方を傷つけているのよ」 ――――僕が抉り続ける傷跡 「待っている相手の方が、今まで無傷でいるのだと思っていたの?本気でもないあなたがむやみに近づけば、それだけで傷つけることになるのよ」 柔らかな声が、僕の意識を切り刻む。 「あなたの態度は、あなたを好きだと言ってくれたその方に失礼だわ」 婦人の静かな叱責は、身がすくむほど高潔な威厳に満ちていて、僕は足から崩れそうになる。 だが、この身体の軸を折りにかかったのは、静かな威厳や叱責の威圧などではなく、告げられた言葉そのものだった。 僕は結局、僕以外の全てを見てこなかった。 最低だ。 最悪だ。 僕は、なんて愚かで残酷なことをしてきたのか。 相手のためを口実に、さんざん逃げ回って傷つけて。 アルヴィンの誠実な感情を一番蔑ろにしてきたのは、やはり僕だった。 カラハ・シャールの一夜。 あの時に見たアルヴィンの表情を思い出せば、さらに胸が締め付けられて呼吸を忘れる。 助けてくれと縋りつくほど、彼を追い詰めたのは僕で。 許してくれと願われるほど、彼を遠ざけていたのも僕で。 アルヴィンを傷つけたくないと口先で謳いながら、彼の傷口を抉り続けて、与えられる優しさに溺れた僕は、自分を守ることしか考えてなかった。 怖かったのは本当。 傷つけたくなかったのも本当。 だけど、僕が振りかざした『アルヴィンのため』は、全て空っぽの偽善で、欺瞞だった。 結局僕は、僕のためにしか動かなかった。 ――――『その方をちゃんと見ているのかしら?』 本当に、僕は今まで、彼の何を見ていたのだろう。 深みもまるでない、ただの張りぼてを眺めていただけだ。 あれほどアルヴィンは、僕の残酷な行動に耐えていてくれたというのに。 振り返るどころか、見ようともしていなかった。 もう、取り返しのつかないほど、僕はアルヴィンを傷つけ、追い詰めていたんだ。 じんわりと歪みそうになる視界を耐えていれば、毅然とした態度だった婦人が優しげに微笑んで、僕の左頬にそっと手のひらを添えた。 「そんな悲しい顔をしないで。あなたが相手の方を本当に好きで、大事にしたいと想っていたことはちゃんとわかっているの。ただ、その方の『特別』になりたいと願うなら、可愛い恋のままではいけないわ」 柔らかな声に引き寄せられるように見つめれば、慈愛に満ちた瞳が見つめ返してくれて。 その穏やかな眼差しに、なんとなくミラを思い出してしまえば、さらに心が弱くなる。 ミラの眼差しは、いつだって人の本質を見抜いていた。 そんな彼女の傍にいたのに、どうして僕はこんな間違いを繰り返してしまうのだろう。 自分で口にしておきながら、何一つわかってなかったんだ。 誰かに指摘されて、ようやく心が理解するだなんて、情けなくて仕方ない。 慰めるように撫でる指先は、僕の心が落ち着くまでじっと待っていてくれて、婦人の心遣いに申し訳なくなる。 だが、止められない自己嫌悪に苛まれて、僕は自然と俯いてしまえば、僅かに婦人の気配が揺らいだ。 「……言葉が過ぎたわね、ごめんなさい。でも、どうしたって傷ついてしまうんだもの、『無理に距離をとるくらいなら、いっそ傷つける』くらいの覚悟をお持ちなさい」 叱咤ではなく、強く励ますような印象を与える声に、誘われるように視線が上がる。 「あなたに足りないのは、傷つく覚悟だけなのだから」 「傷つく、覚悟……」 言葉をなぞれば、じんわりと胸のうちに響き渡る。 傷つく覚悟。 確かに、そうかもしれない。 怖がって逃げ回っていた僕が何より恐れていたのは、『自分が傷つくかもしれない』という不確定な未来。 自分を曝け出せば最後、無防備な心は大きな傷を負うのだと、僕は自然と感じ取っていて。 それが嫌で、僕はあれこれ建前を振りかざしてアルヴィンから逃げ回っていただけ。 そう、僕はカラハ・シャールで、とっくにわかっていたはずだ。 『傷つく覚悟』それさえあれば、僕はここまで悩んだり逃げたり、アルヴィンを傷つけたりせずに済んだのだと。 デメリットを考える時間など必要なかった。 自分の気持ちを探す時間も必要なかった。 僕はただ、頭ではなく、心に自覚させるだけでよかった。 ――――『必要なのは、お前の意思だ』 そう、必要なのはたった一つ、結果を背負う意思。 そうだよね、ミラ……。 ぎゅっと深く目を瞑り、ゆっくりと瞼を押し開く。 静かに心決めた頃合を見定めて、婦人は微笑を湛えたまま、語りかけるように言葉を重ねた。 「どれほど恐ろしくとも、そこから抜け出したいなら覚悟を決めなさいな。逃げても避けられないのだから。それに、好きな相手と一緒に傷つく経験は、あなたをずっと魅力的にしてくれるわ」 にっこり微笑みながら、ちょんちょんと頬をつつかれて、くすぐったくなる。 婦人の心遣いは、沈んでいた僕をやんわりと元気づけてくれているような気がして、その気遣いに後押しされる形で、僕はようやく婦人に笑い返すことができた。 そんな僕の様子に婦人も満足したのか、優しげな眼差しで見つめる。 「大丈夫、あなたが好きになった方だもの。本当にあなたを愛してくれているのなら、ちゃんと受け取って、一緒に痛みを分け合ってくれるわ」 「一緒に……?」 「えぇ、一緒に」 ふんわりと陽だまりに溶けるような視線を交して、笑い合う。 何故だろう、この人と一緒にいると、不思議と誰かを思い出す。 だけど、その対象はおぼろげで、ある仕草にミラを見れば、別の仕草にプレザさんやプランさんの印象を受ける。 でも、この上品な感じに一番近いのは……。 「ママぁー!」 ぼんやりとした記憶を重ね合わせていると、元気な愛らしい声が婦人を呼ぶ。 その声に意識を引き戻され振り向くと、ハンカチを握り締めた少女が、唇を突き出すようにしょげていた。 どうしたのかとよく見れば、泥汚れが一番酷かった胸元に、まだくすんだ色が残っていて、コレが原因かと瞬時に覚る。 「あのね、アン頑張ったんだけどね、とれないの」 「あら、どうしましょう。結構目立っちゃうわね」 「うぅ……」 「大丈夫、泣かないで。ちょっとだけ、ごめんね」 涙を浮かべかけた少女の頭をそっと撫でた後、少女の前に片膝をつき、首にかけていたストールを外して少女の肩を包むように被せる。 長すぎる部分を折り返し、中央でリボン結びをすれば、胸元の汚れ跡が綺麗に隠れた。 少し不恰好かもしれないが、色合いもドレスと喧嘩することがないので、見れないことはないだろう。 「はい、できた。これでわからないんじゃないかな?」 「わぁ……!これ、いいの?」 「いいよ。でも僕の大事なものだから、大切に使ってね」 「うん、ありがとうっ!」 ひらひらと揺れるリボンの裾がお気に召したのか、少女はくるくると回ってはしゃぎだす。 そんな微笑ましい姿を眺めつつ、心の内側で小さく謝罪を呟いていると、 「本当によかったのかしら?」 見透かしたように婦人が僕に問いかけてきて、思わずびくりと肩が揺れる。 錆びついたドアのように首を捻って見上げれば、意味深な瞳を華やかな笑みで包んで返された。 本当にこの人は、どこまで見通しているのだろうか。 「……いいんです。相談に乗ってもらったお礼も兼ねてるんで、もらってください」 「まぁ、律儀な方ね」 くすくすと鈴の音のように笑う声に、少し気恥ずかしさも感じて身体を僅かに揺らす。 確かに、ストールは大事なもので、そう簡単に譲るものでもないのだが、僕が婦人から戴いたものもまた、何にも変えがたい貴重なものだ。 この相談料金に関しては、アルヴィンに文句をいくら言われても余りあるほど、安くついたと僕は思う。 彼女のおかげで、僕はようやく気づくことができたのだから。 ふわりと笑い返して、清々しい気持ちすら感じていると、 「では、私からはこれをお渡ししましょう」 そう言って、婦人は僕の手のひらに小さなブローチをひとつ手渡した。 上品な花文様が美しく、裏の刻印は細かな文字が刻まれている。 古代文字のような造りで、何が書かれているのかまではわからない。 最近ようやくエレンピオスの現代文字に慣れてきたところなのだ、古代文字など到底読めない。 だが、きらきらと輝く小さなブローチは、そこら辺の商店街で売ってるような安物になどどう見ても見えなくて、僕は慌てて両手で受けたそれを突っ返した。 「こ、こんな高価そうなもの……頂けません!」 「ふふっ、あなたはまだ物の価値を知らないのね。娘が頂いたものの方が、よっぽど高価なものよ」 「え……?」 「どうぞ気兼ねなく受け取ってくださいな。親切な異国の殿方へ、心ばかりのお礼です。こちらにいらっしゃる際は、是非お付けになって。きっとあなたの助けになるわ」 くるりと日傘を回して優雅に微笑む婦人に、僕はぽかんとしてしまう。 もしかして、アルヴィンは、とんでもないほど高価なものを、ものすごく自然に僕にくれたりしてたのではないだろうか。 ちょっと待って、まさかこのショートブーツもそうだったりしないよね!? 慌てて視線を落とし、さぁっと青ざめる僕に、婦人は笑みを深くするばかりで、誰も本当のことを答えてはくれない。 金銭感覚が違いすぎて怖いっ! 「ママー、お時間大丈夫?」 「あら、もうそんな時間?ごめんなさい、そろそろ行かないと」 「あ、いえ、お引止めして、こちらこそすみません」 そういえば、友人を訪ねる予定があると言っていたが、ずいぶん時間を割いてもらったようだ。 「大事なことに気づかせてくださってありがとうございます」 「こちらこそ、娘によくしてくださってありがとう。あなたの恋が実ることを祈っているわ」 「ばいばい、お兄ちゃん!」 ぶんぶんとめいっぱい手を振って別れを告げてくる少女に、笑って手を振り返す。 これから大好きな男の子に会いに行くのだ、期待に満ちた笑顔が微笑ましくて仕方ない。 はしゃぎすぎて、また途中でこけたりしないといいんだけれど、なんていらない心配すらしてしまう。 そんな、とても印象に残る出会いは、涼しげに離別を迎えて。 「またどこかでお会いしましょう、恋する魔法使いさん」 去り際、視線を奪うウィンクを投げられ、僕はしばらく2人をぼんやりと見送っていた。 僕が恋する魔法使いなら、きっと婦人は恋の魔法使いだろうな、なんておとぎ話をなぞるように遊んでいると、 「ジュードっ!」 「わっ!」 切羽詰った呼び声と共に、押し倒すような衝撃が背後から襲い掛かった。 急に襲われ、もらったブローチを落としそうになりながら、慌てて振り返れば、必死の形相をしたアルヴィンがいて驚いた。 「え、ちょ、何、どうしたの?」 「どうしたのって、お前…………いや、なんでもない」 「うん?」 やや息切れさえ起こしているのだから、なんでもないことはないだろうに、首を傾げて問いかけても、何故かアルヴィンは答えてくれない。 ただ、僕の両手の中に転がる小さなブローチをつまみ上げると、怪訝そうに眉が歪み、ブローチを手にした経緯を訊ねられた。 何故そんなことを訊くのかは判らないが、特に隠しておくようなこともないので、素直に恋愛相談をすっ飛ばした経緯を話と、あらまし説明を終えた途端、アルヴィンはいきなり地面に崩れ落ちた。 「はぁ……おたくから目を離しちゃいけないってのは、よーっくわかった」 「アルヴィンからもらったものを勝手にあげちゃったのは、悪かったと思ってるよ」 「そうじゃねぇよ……ったく……」 「……怒ってるじゃない」 「怒ってねーよ」 「嘘だ」 「嘘じゃねぇ。今回は無事だったからよかったが……」 「アルヴィン?……無事って何が?」 「いや、何でもない……ただ、おたくにとって、エレンピオスが、まだ安全とは言いがたいってことを忘れてたなって思ってさ。これは俺のミス。だから怒ってるとしたら、俺自身に対して」 「そんなの気にしないのに」 「俺が気にするの。俺の故郷で、嫌な思いしてほしくない」 反論は聞き入れない、とばかりに断言されて、僕はこれ以上追いすがれなくなった。 思い入れのある場所であり、自分の生まれ育った場所だからこそ、マイナスの印象は極力与えたくないのだろう。 誰だって、自分の故郷に悪い印象など持たれたくないものだ。 ただでさえ、エレンピオスは黒匣発祥の地として悪い印象が根付いている。 それに重ねて嫌な思いをすれば、嫌ってしまうかもしれない、そうアルヴィンは思っているのだろう。 世界を共に飛び回り、源霊匣の研究を志した僕に、そんな気遣いは無用だというのに。 本当にこの人は……。 「嫌な思いなんてしてないよ」 「けど……」 「嫌なことや酷いことなんて、ひとつもなかったよ。むしろ、とても優しくしてもらったんだ」 「え?まだ何かあったのかよ?」 「んー……アルヴィンには、まだ秘密」 どういうことだと問い詰めるアルヴィンをかわして、茶化すように人差し指を口元で立てる。 どれだけ詰め寄られても、今はまだ言えない。 僕にだって、少しの夢くらいあるのだから。 せめて理想に近い場所で、いずれ、必ず……。 ――――『あなたの恋が実ることを祈っているわ』 嬉しげに笑って路地を見つめる僕を、アルヴィンは不思議そうに眺めていた。
とても優しくしてもらったんだよ。 未熟な僕の心をやんわり撫でて、とても大切なことに気づかせてくれたんだ。 正直、まだ少し怖いけど。 どうしても避けられないなら。 どうしても傷つくなら。 僕はもう望んでる。 恐怖の霧に霞む、淡い願い。 ただ一人。
――――『あなたがいい』、と。
* * * * 2012/02/23 (Thu) 何が足りないのか。 答えは自分の中にあって、自然と心のどこかでわかってる。 だけど、自分ひとりで考えてたんじゃ、明確な答えにたどり着けない。 なぜなら、頭と心が結びつかないから。 *新月鏡* |