「You are dear」

 

 

 

今日のアルヴィンはなんだかぼんやりしていた。
急ぎの仕事もないらしく、資料を片手に読みふける僕の背後でごろごろしっぱなし。
特に害になるわけでもないので、放っておいてしばらく経った頃、

「なぁ、ジュード」

いつもの彼からは予想できない、宙に浮いたような声がした。
資料読破に集中していた僕の意識を根こそぎ掻っ攫うくらいには、本当に心もとないふわふわした声だった。
どうしたのかと振り返れば、クッションに埋もれながらこちらをじっと見つめる瞳と目が合う。
どこか眠たげにみえるのは、久しく感じることのなかったゆったりと流れる時間のせいだろうか。
真意を探るように見つめたまま首を傾げるものの、呼んだアルヴィンはそれから言葉を継ぐことなく黙ったままだ。
これはどうしたものか、と少々悩んだ後、ふと可能性に見当たる。
大の大人がまさか、と世間一般では思われるかもしれないが、アルヴィンだからありえてしまう。

「アルヴィン」

名前を呼んで傍に歩み寄り、ほら、と両手を広げれば、ゆるりとアルヴィンの瞳が揺らぐ。
そろっと伸ばされた手が腰に回され、しがみつくように抱きしめられた。
擦り寄る熱に不思議と安心してしまって、そっと大きな背中に添うように抱きしめ返す。
ふんわりと香る香水は嗅ぎ慣れたもの。
この部屋に自然と残る、彼の存在の代弁者。
やんわり抱きしめあったまま、僕らは互いに何を言うでもなく感じる体温を甘受し続ける。

ただ、恋しくて。

ただ、愛しくて。

じっくり実感するように、心ゆくまで熱を分け合う。

 

「ジュード……」
「何かな、甘えん坊さん?」

背中に回した片手で、抱き込んでいたアルヴィンの髪をそっと撫でる。
少し硬質な髪も慣れた手触りで心地いい。
そうしてまどろむようにゆっくり撫でていると、幾分穏やかになった眼差しが向けられた。

「……俺……今、さ」
「うん」
「めちゃくちゃ幸せ」
「……そう」

嬉しそうに甘えてくる男の言葉に、自然と口元が弛んでしまう。
お互いに、ずいぶん変わったものだ。

「アルヴィン」
「ん?」
「好きだよ」

瞳の奥で望まれていた言葉と僕が感じたままの感情を囁けば、予想通り。
くしゃりと顔を崩した彼は嬉しげで、そのくせ今にも泣き出しそう。
もうずいぶん一緒にいるんだ。
甘え下手で本音を話すのも下手な彼が、何を思って自分を呼ぶのかくらい、少し考えれば簡単にわかる。
ただ、普段振舞っているように一言、「寂しい」とか「抱きしめてくれ」とかさらっと言ってくれればいいのに、とは思う。
茶化すときは調子が良いのに、こんなときばかり無口すぎる。
望まれればいくらでもあげるのに、本当に彼は不器用だ。

「ホント、可愛い……」
「……ジュード君、それ、褒め言葉じゃないからな?」

僕よりずっと大人なアルヴィンが見せる、子供のような甘えを心地よく感じながら、そっと触れてくる唇に瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

 

* * * *

2011/11/18 (Fri)

こんなベッタベタな夢見たよ。
くっそこの野郎いちゃいちゃしやがってっ…!!!!って目が覚めた。
酷い夢すぎるwwww


*新月鏡*