「贈る気持ち-2」

 

 

 

 

 

「モーゼス、飲め」

ずいっと寄こされたマグカップ。
甘い香りを漂わせた飲み物が僕の手に渡された。
飲めと催促する声に従いながら、一口飲み下せば、程よい甘さが口いっぱいに広がって、胸の内が温かくなる。
どうやら先ほどキッチンで作っていたものらしい。


「これ・・・チョコレート?」
「・・・あぁ、ホットチョコレートだ」


同じホットチョコレートを飲みながら、背を向けてそう言うカルマンの耳はまだ赤く染まったままだ。
まぁ、今の僕もその熱を貰ってしまったらしく、どうも顔が火照って仕方ないわけだが。
赤く染まる頬を隠すように、ちまちまと渡されたホットチョコレートを飲み干していけばあっという間に空になってしまって、僕は何だか寂しい気分になった。

 

「・・・カルマン」
「何だよ」
「寂しくなった」
「は?」


突飛な僕の発言にカルマンがくるりとこちらに向き直る。
そのタイミングを見計らってずいっと距離を詰めれば、至近距離で互いの視線が絡み合って。


「だから、寂しくなったんだよ」
「・・・お前なぁ・・・」


くすくすと笑いながら待ってる僕と、顔をいまだ赤く染めつつがっくりと項垂れるカルマン。

 

もう僕が何を期待してるかは、きっと伝わってるだろう。

 

じっと待ち続けていると、意を決して面を上げたカルマンがすっと髪を梳いて撫でてくれた。
その手に擦り寄るように頬を寄せて、ゆっくりと眼を閉じる。

優しく柔らかな感触が唇に触れれば、甘い香りが僕らを包んで。

 

 

「ほら、寂しくない」

 

囁かれた穏やかな声色に、僕はこの日最高の笑顔を贈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * *

2007/02/14 (Wed)

甘さを精一杯出してみた。
チョコレートですから、甘くて当然ですね。

2月いっぱいまでフリーですので、ほしいとおっしゃる奇特な方はどうぞお持ち帰りください。


*新月鏡*