Season -春-

 

 

 

例えるなら、春

 

 

自分を例えると…うぅ〜ん、春なんじゃないかな。
名前が『美咲』だし、春っぽいから?

あと、最近自覚し始めたことだけど、俺は結構楽観的なのかもしれない。
まぁ、そう思うようになったのは、宇佐見家の方々のせいというか、おかげというか…だったりするのだが。
周りからしてみれば、春の気温みたいに、ぽや〜っとしてて、とてもあやふやなのかもしれない。
それが、すごく不安にさせるのかな?と最近になって思うようになった。

俺は俺なりに考えてるんだけどね。
どうしても大人たちは、色々心配でならないらしい。

 

 

 

そんな俺を育ててくれた兄ちゃんは、『夏』みたいな人で。

これでもか、ってくらいに過保護な温かさ。
「何も心配しなくていいよ」、と幼い俺のことを抱きしめてくれて。
眩しい笑顔でいつも俺を守ってくれる。


でも、兄ちゃんが、垣間見せる怖い部分ももちろんあって。
俺に愛情を熱く注ぐ向こうで、どれだけ苦労してたことか。
俺の知らない場所で干ばつを引き起こしてるかもしれないし、見えないところでスコールになってるかもしれない。
怒られたときに見るのは、そんな現象。

穏やかな兄ちゃんが時折見せる一瞬の厳しさが、夏の日差しのようだった。

 

 

 

そして、そんな兄ちゃんを好きだったウサギさん。
俺は、名前は秋だけど、この人こそ『冬』なんじゃないかと思ってる。
言ったら、ウサギさんすごく嫌な顔しそうだけど。

今思い返せば、最初の印象が最悪すぎた。
あの時は猛吹雪だった気がする。
あまりの温度差に俺は固まってしまって、あぁ、ホントあれは驚いた。
兄ちゃんのことネタにしてホモ小説書くし、俺様だし、酷い目遭わされたし、とんでもない冬将軍だ、って思ってた。


だけど、一緒にいて気付いたこともあって。


そう、ウサギさんは、本当に大事なものには、柔らかな雪しか降らせない。
綺麗で、すぐに手のひらで溶けて消えてしまうような。
切ないくらいの優しさで、静かに想いを降り注ぐだけ。

でも、兄ちゃんは『夏』だから、その雪の切なさを知らない。
届く前に消えてしまうから。

 

だから、兄ちゃんが結婚を決めたあの日、今度は俺がこの人の特別になりたいと願った。


この切なさを、寂しさを、俺が拭い去ってやれたらいいのに。

ずっと、傍にいられたら、どれだけ幸せだろう。


そう、願い続けて…。

 

 

 

今日も俺は隣に座って、ちょっと触れる指先に想いを馳せる。

季節の変わり目みたいに、降り積もった優しさに触れる瞬間。

冷たい指先に宿る、密やかな熱。

今はただ、ささやかな幸せに眼を閉じる。

 

 

 

例えるなら、春

 

雪解けに潜む想いに触れる、温かな季節

 

 

 

 

 

* * * *

2008/11/25 (Tue)

私にはこう見える -美咲編-

ウサギさんが冬に見えるのは、美咲の前で涙した日に雪が降っていたからだと思う。
美咲が春なのは、すごく癒し系だと…可愛いじゃないか!と思うからです。


新月鏡