〜望む〜    K+M(B+)

 

 

たまに、声に出せなくなる。
言いたくても言えない、という不自由さじゃなくて、もっと純粋に『言葉に詰まる』に近い感覚。

 

それは決まってカルマンと2人っきりでいるときで、僕は自分でもつかみきれない感覚を必死に形にしようと焦るばかり。
傍らにある呼吸だとか、体温だとか、しんと静まった夜は酷くはっきり意識させられて困る。
もどかしくて、うろうろと視線を彷徨わせた行き先には彼の顔。
少し酒が入っているため、若干眼がうつろな気がするが、それでも意思の輝きは失われてなくて。
その輝きに魅入られていると、視線を振ってきた彼と眼が合って、さらに言葉に窮してしまって。

「…またか」

そうぶっきらぼうに呟いて来たかと思うと、いつの間にやらその腕に抱きかかえられていた。
苦しいくらいに抱きしめられて困惑する反面、驚くほどの安心感に身体の力が抜けていく。
どうやら彼は、僕自身が捉えきれないものすら、言葉にしなくてもわかるみたいだ。

「お前の望みくらい、何となくわかる」

 

そっけなく零した彼の声に反して、僕を抱きしめる手が熱かったのは言うまでもない。

 

 

 

* * * *

2008/05/12 (Mon)

望めば気付いてくれる幸福

恋する動詞111題 (配布:確かに恋だった)


新月鏡