〜懐かしむ〜    K(if B+)

 

 

家事とは毎日やっても終わりが来ないものだと、最近思うようになった。
次々と部屋を掃除し、洗濯物を回収し、食事の下ごしらえやら何やらと、せわしなく動いているが、一向に終わる気配がない。

 

「あ?何だコレ?」

次の部屋、と入って眼に飛び込んできたのは、散乱した色鉛筆やクレヨン、画用紙その他諸々がところせましと散らばっている。
カルマンは、そんな惨状に小さくため息をつくと、長身の身体を低くして、掃除機片手に散らばった用紙を拾い上げる。
そこに描かれているものを見て、翡翠の瞳に深い色が差す。

「…アイツが帰ったら、酒盛りだな…」

口端に零れる優しい笑みに、纏っていた空気がふわりと和らぐ。
そっと散らばったほかの紙を束ねると、丁寧な手つきで机の上へと戻された。
再開された掃除機の音が、いつになく涼しげに聴こえてしまう。

 

――――白に描かれるのは、懐かしき人たち。

 

 

 

* * * *

2008/05/12 (Mon)

恋を知る前に
愛した人々へ

恋する動詞111題 (配布:確かに恋だった)


新月鏡