〜追いかける〜    M+T(Re)

 

 

「何処行くんだよ!」
「さぁ?どこでしょう?」

苛立った問いかけに、感情の含まれない声が軽やかにはぐらかす。

 

そんなに広くない道の真っ只中、競歩さながらの速さで、それこそ風を切るように歩いていく2人。

「頼むから、もう怒るなよ」
「怒ってませんよ、拗ねてるだけです」

にっこりと微笑みながら、それでも背後から昇る黒いオーラが綱吉を躊躇わせる。


先日、会って話をしようと約束をしていた。
それを専属家庭教師にバレて、強制監禁されていた綱吉は、その旨を告げることもできずに骸を待ちぼうけさせてしまったのだ。
無断で約束をすっぽかされた骸は、嫌味よろしく、先ほどから追いすがる綱吉から距離を置く。
逃げているのか逃げていないのかよくわからない。
ある程度の距離までは許してくれるのだが、それ以上詰め寄れば風の速さで距離を取ってくれるのだ。
専属家庭教師を恨みつつ、未だに機嫌を損ねて足早に去る背中にため息をつく。

 

逃がさないように、懸命に追いすがっても、当分彼との距離は縮まりそうになかった。

 

 

 

* * * *

2008/05/12 (Mon)

附かず離れず
余所見しないで追いかけて

恋する動詞111題 (配布:確かに恋だった)


新月鏡