〜焦がれる〜    M←H(Re)

 

 

不意に現れて、気付けばいない。

 

振り返った視線の行き場を失って、僕は突きつけられた圧倒的な孤独感に弱くなる。
いつからこんなに振り回されてしまうようになったのか。
そんなに弱い人間じゃないと、何度も何度も力で捻じ伏せてきたはずなのに。

「…ねぇ、骸…」

翻弄されるのは好きじゃない。
プライドの高い自分だからこそ、余計に腹が立って仕方ない。
だけど、コントロールの利かないものが確かに自分を弱くしていく。
このどうしようもない冷たい感覚が、きっとその証拠だろう。

 

「次は、いつ…?」

騒音にかき消されながら呟く声は、空気に溶けて。
見上げた先の夕日が、酷く目を焼いて熱かった。

 

 

 

* * * *

2008/05/12 (Mon)

骸雲は切ないくらいがちょうどいい

恋する動詞111題 (配布:確かに恋だった)


新月鏡