「唯一絶対無二の鼓動」

 

 

 

感じられるのは、唯一つ。

 

 

 

今日も今日とて、変わりなく。
ただミッションを待ち続けるネク君と僕。
無駄なことだと何度言っても聴いてはくれなさそう。

 

過ぎ去る人々の群れ
立ち尽くす僕らに気付きもせずに
無意識にその場を避けて
足早に去っていく

まるで・・・

 

 

 

「まるで、世界に僕たち2人だけみたいだね」
「…は?」

小さく吐いた僕の独り言を、彼は一つ残らず聴いていてくれたようだ。
素っ頓狂な声と驚きの眼差しで、顔をしかめながら凝視してくる。

「ネク君、変な顔」
「うるさい」

くすっと笑い返してやれば、むすっと不機嫌顔になる。
見慣れた横顔に、妙にひきつけられて。
そうやって見つめていれば、こちらの視線に気付いたのか、彼の頬に朱が走る。
慌ててうつむく影に、その色は息を潜めてしまうけど。

 

――――隠しきれてないよ、ネク君

 

可愛い、なんて思ってしまう。
こうして、反応をくれるのが彼だけだと思うから、余計からかいたくなってしまうのだが、口を利いてくれなくなるのでやめておく。

「で、何だよいきなり…変なこと言い出して」
「ん?…あぁ、アレ?」

小さな僕の独り言

「こんなにも人がいて、こんなにも世界は広いのに、どうしてだろうね・・・」

 

誰も気付かない
誰も認識してくれない

気付いて少し、寂しくなった
気付いて少し、嬉しくなった

僕たちだけが取り残されたように感じて

 

 

 

 

 

「隣にいるのが君でよかったと思う僕がいる」
「…お前…」
「特に、ノイズと戦ってる間は、強く思うね」
「戦ってる、間?」

風が吹く。
視界を遮る柔らかな髪が、君に霧をかけていくから。
離れてしまいそうで、僕はとっさに彼の手を掴み取っていた。
包み込むように、ただ、焦がれるほどの熱さが胸の内を競り上がってくる。

「平行世界の別世界、僕らは互いに独りだ」

ただ独りで、襲い掛かってくる敵を薙ぎ倒していかなければならない。
恐怖と、苦痛と、様々な感情が、自分を飲み込もうと押し寄せる。

「でも、僕らは互いに繋がってる…君の、命が、僕を生かす」

そっと彼の胸に手を押しやって、祈るように目を瞑る。
掴んだ手はそのままに、同じく自分の胸へ押し付けた。
慌てている様子が手に取るように伝わってくるけど、解放してあげる気は皆無だね。

 

 

 

「戦いの最中、唯一僕が感じられるのは君だけ」

どくり、とネク君の心音が跳ね上がる。

「声も、苦痛も、鼓動も、何もかも…」

硬直してしまった彼に微笑みかけて、最後に、逃れられない楔を打ち込む。

 

 

 

「好きだよ、ネク君」

 

 

 

 

 

ほらね、君が固まってしまったら、僕の世界も停止する。
君が動けば、僕もそれに返そうと動き出すだろう。
言葉をくれれば、答えて返すように。

 

可笑しなことだね
いつの間にか…
僕の世界は君で構成されたも同然になってる

 

 

 

「さて、今日はどうしようか」

雰囲気の硬直した世界をさらっと流して、僕はそっと手を離す。
顔を真っ赤にした彼は、はっとしたように僕を睨んでくるけど、そんな顔してちゃ迫力に欠けるね。
笑えない冗談、なんてネク君は言ってるけど

 

――――好きだよ、それは本当さ…

 

唯一無二のパートナー
それが君でよかったと、このシナリオに感謝くらいしてもいいね。
たとえそのシナリオが、酷く君を悲しませるものだとしても、この気持ちに偽りはない。

 

 

 

回り始めた世界
今日もまた、生きるために駆け巡る

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * *

2007/08/30(Thu)  from memo

初ヨシュネクSS。
ところどころ意味不明だけど気にしない!
とんでもなく自己満足!
楽しい!!!

そんなでバンバン書くぞ☆


*新月鏡*