『君の空 僕の世界』

 

暗い、暗い海の底
溺れそうなくらいの息苦しさを切り離して、ただ独りきり、自分の世界を反響させる。
広がる景色はそれこそ、物足りなさを絵に描いたような極楽浄土。
光のない水面に佇んで、空を見上げて。
君が降りてくるような気がして、飽きることなく眺め続けた。


――――繋がる時間が、早く来ればいい

 

渇望するように、焦がれる衝動を宥めていると、ふっと一筋の閃光が僕を射る。
あまりの衝撃に光に呑まれて水面へとダイブすれば、激しく飛沫が上がった。

「うぁっ!」
「っ…!!」

頭から被った水を振り払い、視線を自分の胸元へ向ければ望んだ姿が目に映った。
首にまわされた腕はゆったりと絡みついて、近すぎる顔に思わず触れるだけの優しいキスをすれば、ふんわりと愛らしい笑みが花咲いた。
溶け合うように何度も味わって、くすぐったそうに笑う君に微笑み返す。

「ただいま、骸」
「おかえりなさい、綱吉君…」

現実世界ではないこの場所で、君は躊躇うことなく『ただいま』と口にしてくれる。
それがどれだけの喜びをこの胸に届けることだろう。
ささやかな言葉だけで、君は僕の世界を塗り替えてしまう。
なんて眩しい存在。
微笑んだまま、うっとりとまどろむように視線を空へやれば、きょとんとしたように僕を呼ぶ声。

「どうかしたの?」
「…君が降ってきた空は、いつも見惚れてしまうほど青い…」
「み、見惚れるならこっち向け!」

頬を挟み込まれたかと思うと、ぐいっと無理やり視線を下げられる。
投げつけられた言葉に眼を見開いた先、映る姿。
自分の言動に我に返ったのか、顔を真っ赤にして視線を逸らしている愛しい人。

「クフフ…綱吉君には、本当に敵いません」

ぎゅっと抱きしめれば、瞬間硬直したものの、すぐに力を抜いて身体を寄せてくる。
柔らかな髪に顔を埋めて、束の間の幸せを噛み締める。
安心しきったように身をゆだねてくる君が、何より愛しくてたまらない。

「好きですよ、綱吉君」
「うん…俺も」

 

 

君が眠りに落ちる時
君が僕の世界へ降りてくる

闇の中の世界を
君の空で、光満ちる世界へ塗り替えて

眩暈を起こしそうなくらい
完成された楽園を築き上げる

 

「君の空は 眩しすぎますね」

 

 

見上げれば 広がる 果てしない青

 

 

 

* * * *

大変お待たせいたしました咲祈様――――!!!!
い、頂いてたのは4月なのに、すでに2ヶ月軽く過ぎててすみませんorz
遅すぎると思ったので、今回絵・文両方捧げさせていただこうと勝手に判断しました。(もうちょっと考えろよ)
小説サイト様に駄文送りつけるのは大変心苦しいのですが…何分、それしかとりえがなくて…(絶望)

はっ!そんなことより、この前はものっすごい萌え小説をありがとうございました!
あまりに素敵過ぎて、かなりこの捧げものも影響を受けていますが、ご容赦ください;;
あんな綺麗で涙腺崩壊させるようなものは書けませんが、よろしければどうぞ、お納めください(平伏)
本当に素敵ギフトと感動の涙をありがとうございました!!!!


*新月鏡*

2008/06/03 (Tue)