「ミルクティー」
『いってきます!』 慌しく駆けてゆくルルゥの声に、ふっと深い眠りから目覚める ずっしりと重い身体に鞭を打って、緩慢な動きで柔らかな寝台から抜け出し、カーテンを引き開ける 瞬間眼を射る眩しい光にぎゅっと眼を瞑って、徐々にその光を受け入れれば、くるりと身を翻して背伸びをひとつ クローゼットから衣類を引き出し、手早く着替えを済ませれば、あとは声がかかるまでゆっくりと寝台の端に座って、注ぐ光に暫しのまどろみ 『おい、そろそろ起きろよ!』 いつもと同じ時間にかかる呼び声 それを合図に、あたかも今起きたようにふらふらとドアを開けて呼ぶ声の許へと歩いてく 『おはよう、カルマン』 『あぁ、おはよう』 いつものとおり、変わらない挨拶を済ませて、彼が用意してくれた温かな朝食の席につく 焼きたてのトースト・おいしそうなハムエッグ・みずみずしいサラダ どれもこれも手際よく作られていて、彼が席につく頃には、まるで豪華なディナーかのように誇らしげに並んでいる 『いただきます』 二人して手を合わせて食事の開始 ニュースを見ながらお互いに意見しあったり、今日の予定を訊き合ったり 他愛のない朝の会話をしながら、ゆっくりと進んでいく時間 並べられた品々を食べ終えると、ひんやりと程よく冷えたデザートが差し出される これもきっと、器用な彼のお手製 それを味わうように口に運ぶと、彼は決まって感想を求めてくる 次回作にさらに活用したいとか楽しげに話すから、僕も素直に答える そして最後に必ず 『おいしいよ』 と付け加えるのも忘れない 彼の笑顔を見るために、僕が言える最上級の褒め言葉だと知ってるから
舌を甘く刺激するデザートを平らげると、彼は再び片した食器を片手にキッチンへと足を運ぶ 去ってゆく背中に少しの寂しさを残して、カチャカチャと食器の音が響いてくる その間に僕がすることは決まってて ポットを1つとティーカップを2つ それらをそっと持ち出して、ポットに3杯の紅茶の茶葉を入れて、熱いお湯をゆっくりと注ぎ込む 蓋を閉めて待ってる間に、ティーカップにはミルクを適量注ぎいれて、お気に入りのクッキーを皿に盛る 一人テーブルに腰掛けて、茶葉が踊るポットをじっと眺めて 早くおいしく出来ると良いな そんなことを思いながら、じっくりゆっくり待ち続ける 早く、早く・・・そう思うのはきっと前にある椅子が寂しそうだから 出来る頃には彼が戻ってくるだろうからと、そわそわとしてしまうのが少しおかしくて
案の定、ちょうど良い頃合になると、食器を洗い終えて彼が再び席につく 僕がゆっくり注ぎいれると、ミルクとぐるぐる混ざり合いながらカップを満たす紅茶 2つのカップに注ぎ終えると、1つを彼の前へ置いて、もう片方を自分の前に持って来て 砂糖は?と訊きながら、いつもの個数を紅茶に落としてスプーンでゆるりと掻き混ぜる
出来上がった紅茶に唇を寄せて 冷めないうちにどうぞ こくりと飲み下した後の彼のほっとした表情が好きで 僕はその顔を見るために、いつもこうして紅茶を入れる 数回飲んで、やっぱりお前の入れる紅茶は美味いな、なんて言われたら、思わず熱が上がってしまって 頬が赤くなってるかも、とどきどきしながら、照れ隠しに紅茶をすすって誤魔化す 胸に広がる温かさにほっと息をつけば、自然と顔が綻んでいって そのまま彼に笑いかければ、ふわりと微笑み返されて それを見てると、やっぱり好きだな、なんて思ってしまう
穏やかな時間の中で 貴方のために、熱い紅茶を入れてあげよう 美味しくなるように 甘くなるように 笑ってくれるように願いながら
貴方の髪の色に良く似たミルクティー 今日も 明日も 明後日も こうやって一緒に飲んでいよう
甘くて優しい これが僕らの日課
* * * * 2006/12/05 (Tue) from diary えっと・・・甘い!!!! すみません、どうしても紅茶でいちゃラブしてほしかったので。 カルマンってカイに結構似てるから、家事とか軽くこなしてそうだと思います。 食事とかカルマン担当で、学校行くルルゥのお弁当作って送り出すんだ。 モゼは何となく低血圧なんじゃないかな〜?と思ったので、ルルゥが出た後にのろのろ起き上がってくるといい。 んで、そのあと穏やか〜に二人して朝食食べて、仕事か何かに出かければいい。 あ、そういえばルルゥって何歳くらいなのかな? たぶんこれくらいじゃない?ってのがありましたら、参考までに教えていただけると嬉しいですVv ここまで読んでくださってありがとうございました *新月鏡* |